CES2019「現地レポート」圧倒的な高画質「ソニー液晶TV」
アップルは“iTunes TV”に本腰!?

ライター:本田雅一(フリージャーナリスト)

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(写真・本田雅一)

CESはどう変貌を遂げたのか

2017年に運営母体の名称が「Consumer Electronics Association(CEA)」から「Consumer Technology Association(CTA)」に変更。家電の展示会から「消費者のライフスタイル全体をテクノロジによって改革しよう」との新テーマに変わって3度目の開催となったCES。最初の2年は試行錯誤が続いたが、今年は開催の形が定まってきた印象だ。生まれ変わったCESの展示は、主に四つの領域に分かれてきている。

一つ目は「家電」。従来からのテレビを主役としながら、カジュアルなオーディオ製品、あるいはビデオカメラ、レコーダー、プレーヤーなどの映像機器、ネットに接続されることで新しい価値提案されたネット家電などの領域で、従来のCESを引き継ぐ内容だ。

二つ目は「ハードウェアスタートアップ」。3DプリンタやCADなどの発達、クラウド連携などで、ハードウェアスタートアップは過去10年ほどで大きく伸びてきた。スタートアップのハードルが下がったことで、多種多様、雑多ではあるものの斬新なアイディアを持つスタートアップが集まる。

三つ目は「モビリティ」。自動運転や電気自動車(EV)、あるいは5Gで移動体までがネットワーク化される新しい社会。こうした中で自動車がどう変化するか。移動や物流が社会全体でどう変わっていくのか。新しい提案が集まる場にもなっている。

四つ目はもっとも伝統的な「高級オーディオ」。高級オーディオブランドはベネチアンホテルのスイートルームに集められ、ここでゆったりと高品位のオーディオコンテンツを楽しみながら、その年の新しい製品について情報交換が行われている。

専門業者以外は、なかなか立ち寄る機会がないかもしれないが、実際に音を感じなければ価値が伝わらない高級オーディオの世界において、このように実際に人が集まる場は、いまだに大きな意味を持っている。

なお、こうした一つの大きな塊になってはいないものの、ジャンルレスのユニコーン(創業10年以内、未上場のまま10億ドル以上の評価額となっている新興企業)も、CESに参加してその知名度を拡大していることが多い。

例えば植物由来の原料だけで牛肉のような味や食感を実現した素材を卸す新興企業「Impossible Foods」は、今回のCESで1万5000食のスライダー(小さいハンバーガー)やタルタルステーキなどを、フードトラックを設置して無償提供した。

ラスベガス地区のハンバーガーショップの多くに、同社の植物由来パティを使ったメニューを置かせ、注文できるようにしていた。同社の素材を使ったハンバーガーはすでに全米展開されている。

このようにテクノロジを起点にして、実に様々な領域に拡大し、もはやエレクトロニクスだけの展示会とはいえなくなっているのが現在のCESだが、その中から日本の家電市場に特化していくつかの話題を取り上げていきたい。

他社を圧倒!ソニーの液晶TV

家電領域においては、まとまった大きな動きは感じられなかった。キャッシュフローの多くを占めるテレビ受像機が過渡期にあるからだろう。

液晶テレビはすでに4K化が進み、8Kパネル採用製品も珍しくはなくなってきた。また低価格製品も含めてHDR(広ダイナミックレンジ)に対応するなど、スペック面では差異化が(少なくとも字面の上では)やりにくくなっている。

もちろん画質差はある。高解像度化とHDR対応により、その差は以前よりも拡がっている。だが、スペックだけでいえば「4K/HDR」を新製品のほとんどが満たしており、それだけでは差異化要因になりにくくなっているのは確かだ。

また、ディスプレイ方式として優位なOLEDも、(低輝度部の階調性など)改良の足がやや鈍っていることに加え、8K化が難しいという事情がある。

しかし、その中でもソニーは高価ではあるものの、明らかに他社を引き離す製品を展示していた。

例えば85インチと98インチを用意した8K解像度の液晶テレビ「BRAVIA Z9G」シリーズはライバルを圧巻する仕上がりだ。ソニーは液晶パネルを生産しないが、独自にバックライトや前面フィルムの貼り付けなどの組み立て工程を持っており、他社にはない広視野角(X-Wide Angle)を実現している。

その視野角はOLED並みで、控え目にいっても他液晶テレビを圧倒する実力がある。この技術は昨年末のZ9Fから導入されていたが、今回は85インチ以上の大型テレビにおいて解像度を8K化し、さらにバックライトには、個々のLEDごとに駆動するBack light master drive(BMD)という技術を導入した。

BMDはZ9Dで導入されていたもので、エリア分割制御のバックライトではあるが、その制御が極めて小さな領域で管理されているため“ハロ”といわれる暗部に雲のように現れる黒浮きが目立たない。とりわけ大型画面のモデルで有効な技術だ。

OLEDパネルでは実現できない8Kの高精細と、1500nits以上に達するのではないか? と予想されるピーク輝度の高さ(非公表)、液晶としては最高レベルの黒沈みなど、まさに最上位というに相応しい液晶テレビである。

なお、価格は未発表だが、Z9Dの100インチモデルにおける実績からすると、98インチモデルは700万円前後になると見られる。薄型テレビは成熟が進んでいるが、そうした中で「ひと目見てわかる」ほどの違いを体現した製品だ。

iTunesがテレビに!!

一方、OLEDテレビはパネルを供給するLGディスプレイの最新パネルを搭載したモデルが、パナソニック(ただし展示会場ではなく近隣ホテルでの展示)の「GZ2000」シリーズだ。発売時期は2019年夏ごろの予定で65&55インチの2ラインナップ構成だが、日本向けの発表がいつかは明言されていない。

ソニーも同じ世代のパネルを使った「A9G」シリーズを発表している。今年のパネルは画質面で大幅に向上したわけではないものの、各社ともパネルの使いこなし(駆動のノウハウの蓄積)によって階調性が高まっている印象だ。

OLEDテレビは局所コントラストが高い一方、低輝度の階調性などに問題を抱えてきたが、年を追うごとに改良が進んできている。

韓国勢はLGがOLEDの柔軟性を活用した、巻き取り型のOLEDテレビを展示して注目を集めた。サイドボードのような本体ユニットから、OLEDのスクリーンが立ち上がる仕組みで、収納するサイドボード型の本体はスピーカーシステムを兼ねている。主流になるかは疑問だが、おそらく日本でも展開されるだろう。

しかし注目すべきは、日本では販売していないサムスンのテレビ。なぜなら、アップルのiTunesがアイコンとして組み込まれたからだ。

実は昨年後半、アップルがテレビメーカー各社と、iTunesのアイコンをテレビに実装する交渉をしていた。今後、他社にもライセンスされるものと考えられる。

テレビ向けにはAirPlay2がライセンスされているが、今回のiTunesアイコンとの違いは、iTunesが提供しているコンテンツストリーミングに直接アクセスできるかどうかだ。買い切りやレンタルで映像コンテンツを楽しめる他、Apple Musicも利用できるなど、iTunes Storeに近い作りになっている。

アップルのサービス事業はiPhoneの稼働台数の多さに引っ張り上げられ、四半期で100億ドルを超える事業に成長しているが、アップルが提供するサービスとコンシューマの接点を拡げることで、サービス事業の価値をさらに高められるからだろう。アップルはハリウッドに拠点を設け、映像作品の調達やオリジナル作品の準備を進めているとされるだけに、そう遠くないうちに“Netflixのアップル版”が始まるかもしれない。