各野球場が相次いで新型オーロラビジョンに刷新誕生以来、世界市場でシェアトップを維持
三菱電機が誇る屋外用“超大型ディスプレイ”

 3月に入って新聞の経済面で少し気になったニュースが、三菱電機のオーロラビジョン/オーロラリボンの納入記事でした。野球場やサッカー場などに設置されているお馴染みの大型映像表示装置です。同市場では三菱電機が高いシェアを持つことは知っていましが、3月に入って4日・阪神甲子園球場、5日・マツダスタジアムと連続してオーロラビジョンの納入を発表。14日には横浜スタジアムへのオーロラリボン(※1)の納入を発表し、ZOZOマリンスタジアムも1月に受注を発表したオーロラリボンが、この3月から運用をスタートするとのこと。

マツダスタジアムのオーロラビジョン/横37.44m×縦7.04m

 こう立て続けに報道されると「さすがは大画面の三菱」と改めて思わされるわけですが、同時にふと気が付いたことは「オーロラビジョンがどんな原理で画像を表示しているのかを、まったく知らない」ということでした。1000型以上もある超大画面であり、球場などで当たり前のように目にしているディスプレイですが、民生用機器ではないこともあって、どんな原理なのかや、いつ頃から開発が始まったのかなどについてはまったくの無知。そこで少し調べてみることにしました。

初号機は1980年、米国ドジャースタジアムに納入

 現状で主流の「三菱オーロラビジョンLED」はその名の通り、表示素子にLEDを採用し、光の三原色R(赤)、G(緑)、B(青)のLED素子を直接発光させ、これを組み合わせることで動画を再現しています。ただし、LEDタイプの登場は1996年。1980年に発表された初号機の表示素子は、小型CRT(ブラウン管)でした。企画の初期段階では超大型ブラウン管の開発という案もあったようですが、この場合、奥行きが10m超となるために断念。代わって登場したのが、小型のR、G、B単色CRTを数万個並べる方式でした。これでも、かなりの大掛かりな表示装置で、価格も当時で10億円以上とか。その開発背景について、三菱電機は次のようにコメントしています。

 『「オーロラビジョン?」は、当社が1980年に「世界初の屋外用フルカラー大型表示装置」として米国のドジャースタジアムに設置したシステムです。 当時の屋外表示装置は白熱電球を用いた文字情報表示用の電光掲示板が主流でした。「屋外で 100m 以上離れて見ても、テレビと同じようなきれいな映像を見たい」という要望に応えるため、 当社は動画表示に適した高輝度小型 CRTを開発し、太陽光の下での鮮やかなフルカラー動画映像表示を実現しました。映像情報をコンピューターで制御する運用システムにより、映像と音楽を連携させることで、球場が一体となってゲームを盛り上げるなど、スポーツ 観戦の新しい楽しみ方につながりました』

 世界初の屋外用フルカラー大型映像装置としてドジャースタジアムに納入されたオーロラビジョン(米国名:ダイヤモンドビジョン)ですが、そのサイズは縦5.8m×横8.7m。今や縦10m超×横30m超も珍しくないだけにコンパクトにも感じますが、当時としてはいうまでもなく巨大かつ画期的。その後、日本の後楽園スタジアム(東京ドームの前身)をはじめ、世界のスタジアムがこぞって採用し、スポーツをはじめとした屋外エンターテインメントの新たな演出ツールとして浸透。今ではスタジアムのみならず国内外の競馬場やショッピングセンター、ホテルや街頭など世界2000カ所以上に納入されています。

 ここで見逃せない点は、三菱電機が初号機の段階からハードの開発と同時に、映像と音声をコンピューター制御する運用システムを開発・提供したことでしょう。今でいうソリューション提案ですね。すべてがデジタル化している現在と違い、当時は映像も音楽もアナログ。それだけに、その制御は簡単ではなかったはず。このハードルをクリアしたことが、今日でも高いシェアをキープし続けている大きな要因だと思います。

 オーロラビジョンで面白い点は、映像装置でありながら、(映像装置を手掛ける)京都製作所ではなく、長崎製作所で開発・製造されていることです。長崎製作所はもともと、船舶用電気機器を製造していた部署。ところが70年代のオイルショックのあおりで造船需要が低迷したことから、船舶用機器に代わる新たな製品分野としてオーロラビジョンの開発をスタートしたそうです。

 その当時の様子を「映像情報メディア学会誌Vol.60(2006年発行/一般社団法人映像情報メディア学会)」では、次のように伝えています。

 『大型映像表示装置は一見華やかに見えるが、オイルショックで舶用電機品の需要がなくなり、切羽詰まった中でのチャレンジがきっかけとなったことは、あまり知られていない。
 ゼロベースから始まった製品開発は、機構系も含め、システムコンセプトを舶用電機品の信頼性とコストパフォーマンスのあくなき追及、さらに、グルーバルな視点と世界トップレベルを目指す気概を持ってスタートした。
 危機をチャレンジのエネルギーに変えるDNAが、四半世紀以上の間、世界のトップレベルの技術とビジネス開拓に向かわせている』

 このあたりのストーリーは、そのままテレビのドキュメンタリー番組になりそうですね。日本の会社が開発し、いまだに世界トップシェアをキープし続けている数少ない(?)電機製品として、ぜひとも取り上げてほしいものです。今後については、やはり4K8K対応ということになりますが、それについても準備は完了しているもよう。早ければ2019年のラグビーワールドカップ、遅くとも2020年の東京オリンピックまでには何らかの発表がありそうです。オーロラビジョンを見る機会は今後、ますます増加しそうですが、こんな裏話を知っておくと、その楽しみも倍加するのではないでしょうか。(征矢野毅彦)

※1)オーロラリボン:オーロラビジョンを細長い形状としたディスプレイ。スタジアムのフィールドを撮り囲むように設置して、字や図形、静止画などをフルカラーで表示する。

横浜スタジアムのオーロラリボン/横76.8m×縦1.92m×2面