落とし穴がいっぱい!? フォトコン「応募規定」“応募=作者の使用権消失”の可能性も
最大の防御は応募規定の「熟読&納得」

フォトコンで増えている主催者とのトラブル

 ここ数年、写真コンテスト(以下フォトコン)の市場が活況を呈しているようです。その背景にはインスタグラムの世界的なブームやスマートフォンの定着、そして新型ミラーレスカメラの相次ぐ登場などがあり、写真や動画を撮ることが日常的に当たり前になってきたからでしょう。そうした中から自信作を第三者に評価してもらいたいと思うユーザーも増加。かくいう筆者も、過去に何度もフォトコンに応募し、たまには入賞も経験しているので、その楽しさは肌で感じています。

 ただし、その一方で聞こえてくるようになったのが、主催者と応募者のトラブル。関係者によれば、応募した写真について「規定違反だ」「いや、そんな規定は知らなかった」といったやり取りが、フォトコン人気の高まりとともに増加基調にあるとのこと。これでは楽しいはずのフォトコンもストレスの種でしかありません。

 どんなフォトコンでも「応募規定」というものが存在し、明記されているのが普通です。ただし、たいていは小さな文字で難解な文章が並べ立てられているような状態。読み飛ばしたくなる気持ちも分かります。

 ところが、そこには重要な規定が書かれていることが多く、中には応募者が不利になるようなものも少なくありません。ここをきちんと読んで、納得した上で応募すれば問題はないはずですが、読み飛ばしたためにその規定を知らずトラブルに発展、ということになるのでしょう。やはりフォトコン応募者は、自らの権利を守るためにも、応募規定の熟読が必須です。そして納得した上で応募するというステップが不可欠だと思います。

 同時にフォトコン主催者には、応募規定をより分かりやすく、見やすく、探しやすい場所に表示することをお願いしたいと思います。特に応募者の不利益になりかねない規定については、見やすさ・分かりやすさを徹底していただきたい。

 というのも得てして、こういった規定に限って、文字が一層小さかったり、一段深い階層に書かれていたり、というケースが少なくないからです。基本的には読まなかった応募者が悪いということになるのでしょうが、分かりにくい表現や探しにくい表示などを行っている主催者にも道義的な責任はあるように感じます。

階層の奥底に書かれた落とし穴!?

 応募者に不利になる規定として、最も顕著だと思うものは「非入選の応募作品に関する規制」です。入選作への規制(他コンテストへの応募禁止、他展示会での展示禁止等)なら理解できます。もともと、その賞がほしくて応募したわけですし、入選に対する何らかの対価(賞金、賞品、栄誉等)も支払われているわけですから。

 しかしながら、非入選だった応募作にまで、何らかの規制をかけているフォトコンが少なくありません。フォトコンは選考委員や主催者が主観や利害などで優劣を決めるもの。Aフォトコンで落選でもB写真展では入賞、というケースは少なくないのですが、そうした自由を奪われてしまうような規定が存在していることは事実です。

 そのことをきちんと把握して、それに納得して応募するのであれば何の問題もありません。ところが一般的には「非入選作品には規制がなく、フォトコン終了後は自由に使える」と考える人の方が圧倒的。ここはくれぐれも注意したいポイントです。以下は、主要なフォトコンの応募規定の中から、非入選の応募作品に関する規制が表記されている部分を抜粋したものです。

 まず、今回調べた中で最もハードというか、作者の使用権の永久喪失にも匹敵すると思われる規制がこれです。

 「一度ご応募された作品は、個人のウェブサイトなどで紹介することはかまいませんが、他のコンテストなどに重複してご応募することはご遠慮願います」(オリンパス)

 非入選の応募作品に対して、その後の使用をここまで明確に規制した応募規定は、今回調べた中では他にありませんでした。他のフォトコンへの“応募禁止”ではなく、“ご遠慮”という柔らかい表現ではありますが、どうなのでしょうか。仮に応募が発覚した場合、何らかのペナルティがあるのでしょうか――? 個人的には一度応募すれば、その作品の使用権を事実上放棄するにも等しい内容に思えます。

 これを読んで納得した上での応募であればかまわないのですが、この規制をどれだけの応募者が読んでいるのかは不明です。何しろこの規制は、当該フォトコンの応募規定の中への記載ではなく、もう一段深い階層のページに記載されていたもの。果たして、そこまでたどり着いた応募者がどれだけいたのでしょうか……。

事実上の使用制限に等しい規制

 非入選の応募作の使用制限を明確に記載した応募規定は、上記以外には見当たりませんでしたが、事実上はそれに準ずる内容とも受け取れる応募規定であれば、かなりの数がありました。これらを要約すると「非入選の応募作であっても、主催者グループが応募者に連絡等をせずに広告等に使用する場合があります」というもの。

 これにより、何が応募者の不利益になるかというと、別のコンテストに応募した場合に、重複応募として失格となる可能性があることです。

 どこのフォトコンでもたいていは、他フォトコンとの重複応募や他コンテストの入選作の応募を禁止しており、発覚した場合は失格処分が科せられます。入選作を応募する人はあまりいないでしょうが、非入選作を別フォトコンに応募することは日常茶飯事。ところが過去に応募したフォトコンの主催者が販促のために非入選作を使用していた場合、それが発覚すれば重複応募と判断される可能性が高いわけです。ということで事実上は、応募者の使用の一部を制限するに等しい内容といえます。

 「当社に投稿・提供された投稿コンテンツについて、お客様は、当社がお客様から個別に承諾を得ることなく、以下のとおり使用することを異議なく承諾したものとします。
 ①投稿コンテンツの本件ウェブサイトその他本件サービスを提供する媒体への掲載および削除
 ②媒体、態様を問わず、当社または第三者による、ソニーグループ各社のPR活動およびソニー製品の販売促進活動(以下「コンテンツ利用目的」といいます)への投稿コンテンツの利用
 ③何らの対価を支払うことなく、当社または第三者によるコンテンツ利用目的の範囲内での自由な投稿コンテンツの複製、加工、編集、頒布その他の方法での利用」(ソニー)

 「ご応募された作品につきましては、以降、A氏(選考委員)、E社(協賛企業)、P社(協賛企業)、パナソニック株式会社、及びそれら関連会社のWEBサイト、SNS、雑誌、新聞、番組、カタログ、ポスター、ちらし、ポストカードなどの店頭販促物や、写真展、イベント等で、永続的に使用(掲載、展示、上映等)することに同意したものといたします」(パナソニック)

 「ご応募された作品につきましては、以降、ミズノ株式会社、及びそれら関連会社のWEBサイト、SNS、雑誌、新聞、番組、カタログ、ポスター、店頭販促物や、写真展、イベント等で、永続的に使用(掲載、展示、上映等)することに同意したものといたします」(ミズノ)

 「応募作品の著作権は作者に帰属しますが、発表後の展示や広報、チラシ、作品集、ホームページ等への使用権は主催者に帰属します。(使用に当たっては作者の氏名を表示します)」(日本写真文化協会)

 ここで改めてお断りしておきますが、非入選の応募作品の二次使用がNGだといっているのではありません。応募者はこうした応募規定をきちんと読むべきであり、主催者もこれを分かりやすく・見やすく・探しやすく表示すべきだと思うわけです。

ユーザーサイドに立った応募規定

 現実には非入選の応募作品に対する規制を、設けていない主催者の方が圧倒的に多いことは確かです。また、設けていても非入選の応募作品の利用について、ユーザーサイドに立った内容としている企業もあります。仮に、応募規定を読まないユーザーが今後も減らないとしても、以下のような表現であれば、規定に起因するトラブルは激減するように思えます。

 「入賞作品は。展覧会展示やポスター、カレンダー、小冊子作成、インターネット、ハガキ、クオカードなどでの活用、および主催者の宣伝広告などに無償で使用させていただきます。(中略)また入賞作品以外の応募作品についても、同様に使用させていただくことがあります。(その場合には、各応募者に別途ご連絡いたします)」(住友不動産販売)

 今回調べた応募規定の中で、非入選応募作の使用規定では、これが一番の優等生だと思います。これでしたら、フォトコン終了後に他フォトコンに応募していたとしても、連絡があった時にそれを伝えて使用を拒否することができます。

 実際、主催者が非入選の応募作を販促などに使うケースは、現実にはそう多くないでしょう。応募規定で「使うかもしれません」と書き放しにして、無意味に応募者を縛るのではなく、上記規定のようなひと手間があってもよいのではないでしょうか。それでトラブルが回避できるのであれば、安いものではないのかと。

 「主催者は募集期間中の作品を、本コンテストの広報活動のために、公式SNSアカウントにて公開する権利を有するものとします。ただし、これによって、入賞を約束するものではありません」(ニコン)

 無連絡の使用であっても、このように期間を限定しているのであれば、まだ納得しやすいと思われます。ただし、その広報活動がWEBなどで長期にわたって閲覧可能な状態になるとしたら、後々で重複応募となる可能性も否定できません。

 「応募作品および入賞作品(その画像データを含みます)につきましては、主催者およびその親会社であるキヤノン株式会社にて商品開発の目的に利用させていただく場合があります」(キヤノン)

 ここでいう「商品開発」が具体的に何を指すのかは不明ですが、少なくとも販促や広告などのための作品公開ではなさそうです。これをポジティブに解釈すれば、非公開の使用に関してまで、その用途を明確化している良心的なフォトコン、ということになるのでしょう。少なくとも非入選の応募作への使用制限につながる要素はなさそうに思えます。

 いずれにしてもフォトコンの応募規定には、応募者が不利になる意外な落とし穴が潜んでいる可能性があります。せっかく苦労して手間暇かけて仕上げた作品を応募するのに、本当にふさわしいステージなのか――。そのことを判断するためにも応募規定の熟読・納得は、面倒がらずに履行すべき重要事項です。そして納得できない規定があれば、主催者に問い合わせるなどの積極的な行動も必要だと考えます。(征矢野毅彦)

※)各応募規定はすべて2019年3月25日現在の当該主催者のHPから抜粋したものです。