2019年度「IT導入補助金」最新動向予算縮小、補助金額の上限450万円に
下限額引上げで採択件数は減少の方向

2017年から制度がスタートした「IT導入補助金」について、2019年度も平成30年度補正予算案の措置として実施される方向で進んでいます。大枠のスキームは変わりませんが、例年同様に要件などが一部変更されています。活用を検討する上で、押さえておきたいポイントを解説しましょう。

予算規模は減額の見通し

IT導入補助金は、「中小企業や小規模事業者などの生産性向上を実現するため、バックオフィス業務の効率化や新たな顧客獲得などの付加価値向上(売上アップ)に貢献するITツール導入を支援する」ことを目的とした制度で、正式には「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といいます。

2016年度補正予算案における措置として、2017年度に初めて実施。2018年度(平成29年度補正予算)には前年度から大幅に規模拡大され500億円の予算が組まれました。

2019年度は、平成30年度第2次補正予算案として「中小企業生産性革命推進事業」の枠組み内で予算が組まれました。中小企業生産性革命推進事業とは、前年まで個別事業として予算取りされていた「IT導入補助金」「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」「小規模事業者持続化補助金(小規模事業者持続的発展支援事業)」の3つから構成され、合わせて1100億円が計上されています。

●経済産業省「平成30年第2次補正予算の概要(PR資料)」より抜粋

昨年、2018年度における各事業の予算は、ものづくり補助金が1000億円、小規模事業者持続化補助金は「広域型販路開拓環境整備事業」と合わせた「小規模事業者支援パッケージ事業」として120億円、IT導入補助金は前述したように500億円と、合計1620億円規模でした。

2019年度は中小企業生産性革命推進事業として予算化されているため個々の事業金額は公表されていませんが、単純比較すると2019年度は1620億円から1100億円へ予算縮小に。各補助金事業が前年と同じ割合だとするとIT補助金は420億円規模となります。

しかし、2018年度のIT補助金では3次公募まで実施されましたが500億円の予算は未消化となったようです。また、2019年度はすでに公募が始まっているものづくり補助金に割かれるとの見方が強く、2019年度のIT補助金は大きく減額となる見通し。場合によっては200億円や100億円規模とも推測されています。

さらに、2019年度は要件などに大きな変更がなされており、その活用の検討にも影響を与えそうです。次に、この点を見ていきましょう。

2019年の変更点は2つ

2019年のIT補助金は対象事業者(中小企業・小規模事業者)や申請方法(ITベンダーやサービス事業者、専門家などの支援)は基本的に変わりませんが、「補助金額」と「補助対象」について変更される方向です。以下は、現時点で公表されている内容です。

●中小企業庁「中小企業対策関連予算 31年度予算 IT導入補助金」より引用

補助金額が大幅に変更

まず、補助金額の上限額が前年(50万円)から9倍となる450万円へと大幅にアップされています。補助率は前年と同じ2分の1ですから、900万円規模のIT導入でも活用が検討できるようになります。

その一方で、下限額も前年(15万円)から2倍以上の40万円に引き上げられます。このため前年は30万円規模の少額のIT導入にも同補助金の活用を視野に入れることが可能でしたが、2019年度は80万円以上の導入案件でないと使うことができず、活用のハードルが上がりそうです。

2018年度は上限額引き下げ(100万円から50万円に)と補助率の引き下げ(3分の2から2分の1)に加え、前述の通り予算枠を拡大し1件あたりの補助金額を抑えることで、利用者(採択)数を増やす方針でしたが、2019年は逆に1件あたりの補助額の充実を狙ったといえます。

約13万5000事業者の活用を見込んだ2018年度でしたが、実際には6万3000件程度と想定の半分に留まり、予算も未消化といわれている背景を考えれば、こうした方向転換も当然といえるのではないでしょうか。

HP作成が補助対象外に

もう1つの変更点は、補助対象からホームページ(HP)の作成などが外れる見通しであることです。もともと同補助金で対象となるITツールは、業務効率化や売上アップなどの課題を解決できるものとされ、例えば顧客管理システムや在庫管理システム、コミュニケーションツールなど。これらの導入に伴うソフトウエアやサービス導入に要する費用などが当てはまります。前年までは新規作成や刷新する場合にはHP作成でも申請できたわけですが、これが対象外となるわけです。

HP作成の対象外や下限金額の引き上げなどの変更は、小規模なIT導入を検討している事業者にとっては向かい風ですが、行政側は販路開拓や基礎的なITツールの導入では小規模企業持続化補助金の活用を促しています。

小規模企業持続化補助金とは、HP作成や決済・会計ツール、翻訳機などの外国人対応ツールといったものを対象に、最大50万円(補助率3分の2)を補助する制度。複数事業者による共同申請も可能です。例年であれば、2月下旬から3月上旬にかけて公募が始まりますが、2019年度は遅れているようです。いずれにせよ、実施はされるので、IT導入補助金では要件を満たせないものについては、小規模企業持続化補助金の活用を検討したいところです。

2019年度IT導入補助金の詳細は調整中で、決定次第、経済産業省や補助金などのホームページ上に掲載されるとのこと。公募開始は、4月~5月の予定です。

採択予定数に満たない場合などは追加公募が行われるのが通常ですが、これまで解説してきたように2019年は予算額の縮小や金額要件の引き上げなどにより採択される件数は大幅に減る見込みとなっています。場合によっては、1次公募で終了する可能性もあるだけに、例年以上に早めに準備すると共に、追加公募を期待することなく1次募集で申請することがポイントといえそうです。(長谷川丈一)