トレンドマイクロが2019年事業戦略発表会を開催つながる世界では“包括的な可視化”が重要
日本市場では3つのビジネス領域拡大に注力

セキュリティソリューションベンダー大手のトレンドマイクロは、報道機関向けに「2019年事業戦略」発表会を開催。今後のセキュリティ業界を取り巻く環境を概括すると共に、同社が注力するビジネス分野について語りました。その内容をレポートします。

つながる世界では“包括的な可視化”が重要

都内で開催された発表会には、トレンドマイクロの代表取締役兼CEOのエバ・チェン氏と取締役副社長の大三川彰彦氏が出席。まず、エバ氏が登壇し、「当社の今後10年のビジョンは“One Vison”であると」といい、ネットワークによりすべてのモノがつながる世界においては「セキュリティ対策もエンドポイントやクラウド、ネットワークなどの個別対策を講じるだけでは不足。“包括的な可視化”が最も重要である」と強調しました。

「個別にセキュリティを考えるのではなく脅威の全体像を理解(可視化)して、多くの情報から重要なものを把握することにより、脅威に備え、対抗し、迅速に復旧できるようになり、お客さまはより多くのことを実行できるようになる。これがサイバーセキュリティの極意である」(エバ・チェン氏)。

●トレンドマイクロの代表取締役兼CEOのエバ・チェン氏

また、セキュリティ専門家の人材不足についても言及しました。エバ氏は、「IT環境と脅威が常に変化する環境では技術やツールも常に進化する。昼夜、時間に関係なく対応に当たることも必要で、専門家には知識だけでなく情熱も求められる」と指摘。これに対して、トレンドマイクロでは約6000人のセキュリティ専門家が最新ツールと知識を駆使して対応できると、同社の強みをアピールしました。

日本市場でのビジネス戦略

続いて、登壇した大三川氏は2019年の日本市場におけるビジネス戦略について語りました。最初に、言及したのは、国内サイバーセキュリティの最新動向についてです。

●トレンドマイクロの取締役副社長の大三川彰彦氏

国内のセキュリティ動向の現状として大三川氏が掲げたデータは、業界特有のインシデント発生率:34%で3年連続増加/1組織の平均アラート件数:月あたり約36万件/情報セキュリティ人材不足数:約13.2万人というもの。

2019年の具体的な脅威としては、「ホームネットワークを利用した在宅勤務が企業のリスクとなる」「産業システムを狙う実世界の攻撃への関心が高まる」といった点を予測しました。

さらに、今年から来年にかけてはラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックなどの世界的イベントが国内で開催されるため注目を集め、日本全体がサイバー攻撃にさらされると警鐘を鳴らしました。しかも、2020年には約37万人が必要と推計されているセキュリティ専門家ですが、現状のままでは19.3万人が不足するとも。しっかりとセキュリティに目を向けておくことが必要となりそうです。

●サイバーセキュリティの最新動向
●2019年セキュリティ脅威予測

こうした中、同社が日本市場で注力する分野として挙げたのは「事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションの提供」「規模・業種に最適なSOC(セキュリティ・オペレーション・センター)支援」「IoT関連ビジネスの推進強化」です。

●日本市場でのビジネス戦略

事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションの提供

事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションの提供について、大三川氏は「法人組織における事業プロセスは商品企画から開発、生産や販売、サポートまで一連のサイクルで回っている」といい、「すべてがつながった世界では横断的に一貫したセキュリティを担保する必要がある」と指摘しました。

これに対し、同社は商品企画やサービスを提供する時に利用されるサーバーやプラットフォームを守るIT向けソリューション、工場など産業ごとに特化した環境を保護するOT向けソリューション、リスクを可視化して対策案を提示するリスクアセスメントなどを提供していくとしています。

具体的な製品として、トレンドマイクロのクラウド型セキュリティ技術基盤「Trend Micro Smart Protection Network」や脆弱性発見コミュニティ「Zero Day Initiative(ZDI)」などを挙げました。

●事業プロセスに沿った組織横断型のセキュリティソリューションの提供

規模・業種に最適なSOC支援

規模・業種に最適なSOC支援では、情報漏えいやシステムの稼働停止といった被害が深刻化する前に早期察知により対処するためには、SOCによる定常的な監視が必要であることを強調しました。しかし、法人組織においては、ネットワークにつながる機器の急激な増加を背景に、サイバーセキュリティ人材の不足が喫緊の課題であると指摘。これに対して、トレンドマイクロはマネージド・セキュリティ・サービスパートナー(MSSP)へ規模に応じた適切なソリューションを提供することでSOC支援を行うとしました。

具体的なソリューションとして、法人向け総合エンドポイントセキュリティ「Trend Micro Apex One」や「ウイルス バスター ビジネスセキュリティサービス」などを挙げました。Trend Micro Apex Oneは今年に入ってから発表したもので、サイバー攻撃の事前予防(EPP:Endpoint Protection Platform)と事後処理(EDR:Endpoint Detection and Response)を統合したソリューションとなっています。

●規模・業種に最適なSOC支援

IoT関連ビジネスの推進強化

IoT関連ビジネスの推進強化では、IoTの活用がさまざまな業種に拡大していく中で業種特有の環境が存在しており、各業種ごとに最適化したセキュリティの必要性を指摘しました。同社では、従来から「スマートホーム」「スマートカー」「スマートファクトリー」の各領域でビジネス展開しており、2019年もこれらに注力。各分野において知見が豊富なパートナーと連携して、セキュリティソリューションの開発と提供を推進していくとのことです。

●IoT関連ビジネスの推進強化

スマートホームでは通信事業者向けに通信網を介したセキュリティソリューション「Trend Micro Consumer Connect」や、ユーザーのセキュリティ状況を把握するためのセキュリティダッシュボードなどを提供することでコンシューマーユーザーのデジタルライフを保護するとしました。

スマートカーにおいては、今後の普及が見込まれる自動運転・コネクテッドカーを防御するためのソリューションを提供。具体的にはIoT機器向けセキュリティソリューション「Trend Micro IoT Security」の展開に加えて、自動車産業に造形の深いパートナーとの連携により、アクセルやブレーキなど自動車の走行を制御する車載ネットワーク向けのセキュリティ製品を開発すること明らかにしました。

また、スマートファクトリーでは業種特有の環境を保護するOT向けセキュリティソリューションの提供に注力するとしています。産業用ネットワークとプロトコルに強みを持つ台湾のMoxaとジョイントベンチャー「TxOne Networks」を設立。産業用ファイアウォールや産業用IPS、産業用ネットワーク全体を可視化するための統合管理ツールなどを開発中であることを発表しました。

発表会では、開発中のソリューションについてデモを一部公開しました。工場内で稼働するベルトコンベアを停止させようとする攻撃を防御し、生産ラインを止めることなく動かすことができるものです。「攻撃されないことを前提に作られていることが多い産業用の制御システムはセキュリティリスクが高く、最近はサイバー攻撃に対する関心が高まってきた」(大三川氏)とのこと。対策の重要性を説くと共に、同社のソリューションを早い段階で提供したいとしました。(長谷川丈一)

●TxOne Networksで開発に取り組んでいるソリューションのデモ用機器