HD-PLCの機器組込み実証を開始/パナソニックWi-Fiにとって代わるテクノロジーではなく
併用することでよりスムーズな通信網を実現!

 パナソニックが「HD-PLCの家庭内機器組込みに向けた実証」を開始したと発表しました。こう聞いて、「今さらPLC?」と思う方もいるでしょう。そういう方はかなりのネットワーク通。大半の方にとっては、「PLC」と聞いてもピンとこない用語ではないでしょうか。

 HD-PLCとは“High Definition Power Line Communication ”の略です。家庭内やオフィス、工場などにあるコンセントなどの電力線を用いた高速通信ネットワークのことで、PLCアダプターをコンセントに接続するだけで高速データ通信(理論値では最大244Mbps)が可能になります。

パナソニック:HD-PLCアダプター「WPN7011」

 パナソニックは2006年から家庭用アダプターの商品化をスタートし、標準化団体「HD-PLCアライアンス」を設立するなど、積極的に取り組んできた経緯があります(HD-PLCはパナソニックの登録商標)。しかしながら、当時はWi-Fiなどの無線通信技術に押されて、いつの間にか話題に上らなくなったテクノロジーという印象があります。

 ところが、その可能性を地道に追及し続けてきたのがパナソニック。今回発表した実証実験は、現状ではアダプター経由でしか認められていない対応機器(家電機器、住宅設備機器等)への、HD-PLCの直接搭載を目指すもの。パナソニックでは「家電や住宅設備機器に搭載した場合にも、電力線を通信線として利用できるための環境づくりを行う」としています。

 具体的には、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、エアコンなどの他、テーブルタップや照明器具などにHD-PLCを搭載して、以下の技術実証を行います。
 ・コンセントに挿した際に、セキュリティを確保した上でネットワーク接続性の評価
 ・金属製の機器筐体や壁などの躯体に遮へいされることにない利便性ある通信性能や新たなサービス導入に対する評価
 ・HD-PLC動作時における家電機器への影響度の客観的評価による強制の確認

Wi-Fi時代における「HD-PLC」の立ち位置

 ここまで読まれて、「Wi-Fiがこれだけ高速化し、普及している現状で、今さらHD-PLCにどこまでの優位性があるのか」との疑問を持たれた方も少なくないでしょう。HD-PLCの特徴をひと言でいえば「Wi-Fiを補完する存在」ということです。

出典)パナソニック:ホームページ

 便利で効率的なWi-Fiですが、使用環境などによっては課題が残っていることも確か。そこをHD-PLCが補完することにより、よりスムーズなネットワークを構築できるわけです。具体的には以下の3つのメリットがHD-PLCにはあります。

 1.「省線化と、それによる敷設コストの削減」
 HD-PLCは既設の電力線を利用するネットワーク。そのため、原則として新規の配線工事などを行う必要がなく、工事コストの大幅な削減が期待できます。しかも、山奥の現場など、電力線以外にはインフラがないような施設でも低コストで高速ネットワークを構築可能です。

 2.「無線通信の補完」
 例えばWi-Fiには、壁などによる減衰の発生や金属製設備による電波の反射、そして無線機器の影響による電波干渉などの課題があります。そうした環境下ではHD-PLCを併用することで、無線と有線のそれぞれのメリットを生かした理想的なネットワークを構築可能です。

 3.「長距離通信」
 パナソニックが提唱するHD-PLCは、独自の中継技術「マルチホップ」を搭載。これはマスターアダプターが送信した信号を、ターミナルアダプターが次々と後方のアダプターへ中継(ホップ)するもの。最大ホップ数は10で、距離にして数キロ先のアダプターにまでデータの送信が可能になっています。

機器組込みの実現で、その魅力は倍増!?

 これらのメリットを改めて考えれば、Wi-Fiを補完する技術としてのHD-PLCは、かなりの有望株といえるのではないでしょうか。両者を組み合わせることで、より円滑なネットワーク環境が構築できることは確かです。また、これまでネットワーク化が遅れていた施設や建物については、新規に導入する高速通信インフラとして、コストや効率などの面から非常に有利だと思われます。

 個人的にはこのニュースを聞いた当初は、「PLCとは懐かしい」と思ったことも確かです。しかしながら、今回改めてそのメリットを確認してことで、今後IoTが本格化し、さまざまな機器がネットワーク接続する時代だからこそ、かなりの有望な技術ではないかと思い直しました。

 というのも、弊社事務所を考えても、6年前の開設当時と比較して、今はPCや複合機、プリンターなどの数が増えたのですが、それらを繋ぐネットワークは有線LANがメイン。Wi-Fi環境も整えてはいるのですが、そちらはもっぱらモバイル機器や来客用。事務所の据え置き機器については回線の安定度などから、あいかわらず有線をメインにしています。そのため、LANケーブルが室内のあちこちを這い回っているという、お恥ずかしい状況でもあります。

 ところがパナソニックの実証実験のように、機器にHD-PLCが組み込まれるようになれば、この状況は一変。電源コンセントを差し込むだけで、高速通信が実現できます。しかも、ネットワークの安定感はそのままで、ケーブルが這い回らないすっきりとした室内を実現できます。現状のように「PLCアダプターを介して」ということであれば魅力半減なだけに、ここはぜひともパナソニックに機器組込みを実現してほしいところ。

 IoT機器の総数は、2020年には全世界で400億台ともいわれており、家庭・事業所を問わず今後は部屋中がインターネット対応機器であふれかえることになりそうです。それを繋ぐネットワークをどうするのか――。そうした時代が目前だけに、HD-PLC組込み機器のニーズは今後、据え置き機器を中心に高まるように思われます。(征矢野毅彦)