スマホの侵食で“需要激減”の真偽!?/カーナビ国内出荷統計・2018年は105.5%の成長市場
世界市場「2022年に3117万台」との予測も!!

 JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が3月の民生用電子機器国内出荷統計を発表しました。これをチェックしていて「あれ?」と思ったのがカーナビゲーションの出荷統計です。3月こそ前年比96.4%ですが、1・2月は100%以上。2019年1~3月期でも100.1%と横ばいをキープしていたからです。

 ここのところカーナビ関連のニュースといえば、スマホに侵食されての「需要激減」やカーナビを主力とするメーカーの「業績不振」など暗いものばかり。個人的にカーナビは、取材等の仕事ではほとんど接することがない商品分野だけに、こうしたニュースに接しても「やっぱりそうなのか」ぐらいの、他人事だったことは確かです。

 ところが改めて出荷統計を見ると、不振どころかデジタルデバイスとしてはなかなかの健闘ぶり。そこで興味がわき、2018年1~12月の統計をさかのぼってみたのですが、やはり通期で105.5%というけっこうな成長ぶり。しかも、2018年は前年を割った月が一度もなく、年間出荷台数614万台という大きなマーケットであることを再認識させられました。

 多分、単価はダウンしているでしょうから(JEITAの出荷統計は台数のみ)、メーカーとしても楽でないことは確かだと思いますが、少なくとも台数が伸びているということは、カーナビをほしいというニーズがまだまだ増加しているということ。しかも、クルマ業界の今後でいえば、インターネット連携の重要性がさらに高まることが確実ですし、カーナビもやり方次第では、まだまだヒット商品が生まれる余地が十分あるように思えます。

 その一方で、各方面で伝えられている「スマホからの侵食」や「メーカーの経営不振」という現実もあり、それらと出荷統計とのギャップが興味深いところ。出荷の好調要因としてJEITAは「日本市場は引き続きカーナビゲーションシステムの需要が高く、安心、安全に対するニーズが高い。通信機能を搭載し、各種テレマティクスサービスを享受できるIVIシステム(※1)としても普及しやすい環境にある」としていました。

 これではイマイチ分かりにくい。そこでいろいろと調べたのですが、2018年1月に矢野経済研究所が発表した「カーナビ世界市場に関する調査を実施(2017年)」には、カーナビの世界需要について、かなり大胆な予測がまとめられていました。

 このレポートによれば2016年の世界市場規模は、前年比110.3%の2296万台。そして2021年に3000万台を突破し、2022年には3117万台にまで達すると予測していました。これは2016年比で137.4%もの成長。スマホが世界的に当たり前のデバイスとなっている現状や、グローバルでさらなる進化を遂げるはずの今後においても、カーナビはその侵食をものともしない、かなりの有望市場ということになるわけです。

カーナビの近未来像

 ただし、機器としての様相はかなり変化するようで、同レポートでは「多様化するカーナビデバイス」と題して、次のように記しています。

 「高級車にはeコックピット(※2)、中・小型車にはDIN型カーナビ(現在主流のインダッシュタイプ)、主にアジアで展開されている大衆車や米国のKT法(※3)順守にはDA(ナビ機能を持たないディスプレイオーディオ))、新興国ではスマートフォンナビとPND(ポータブルナビデバイス)といったすみ分け進む一方で、カーナビやDAによるスマートフォン連携も進んでおり、各国のスマートフォン普及率や政府による大衆車政策などの市場環境によってカーナビの使われ方が変わる可能性もある」

 確かに高級車であれば、コネクテッドカーを象徴する存在としてeコックピットの搭載が当たり前になるでしょう。ドイツ製の新型高級セダンのナビをスマホで代用するというオーナーは、それほど多くないはずです。また中・小型車でも、国内でいえば最近は、ディーラーの特別キャンペーンでカーナビ、というケースも珍しくはありませんし、これらのマーケットではカーナビの地位がそう簡単に揺らぐことはないようにも思えます。

 問題は後付けのマーケットでしょう。これに関連した予測分析を同レポートでは次のように記しています。

 「カーナビの代替候補であるPNDは、スマートフォンナビに侵食されて大きく縮小する見通しであるが、スマートフォンの普及拡大は、カーナビとDAのスマートフォン連携といった新たな需要分野としても成長が期待できる」

 ナビ機能を持たないDAをカーナビとしてカウントするのか、についてはやや疑問もありますが、車載ディスプレイとスマホとの連携はコネクテッドカーへの流れの中で今後、“車載情報表示システム”として大きく伸びることは確かでしょう。

 「スマートフォンナビは、ある程度のカーナビ需要を侵食すると思われるが、欧米ではカーナビ市場はまだ伸び続けていることもあり、カーナビ普及の阻害要因にはならないものと考える。ただし前述したように、DINカーナビのままではなく、スマートフォンと車載機との連携やeコックピットのような情報通信・表示システムに進化した上で市場が動いていく可能性が高い。
 今後の車載情報端末はeコックピット、カーナビ、PND、DA、スマートフォンナビといった複数の種類の各々の製品が、各国の文化や言語、生活環境といった市場環境や特性を反映しつつ、地域別需要に適合しながら、共存していくものとみる」

スマホとカーナビの連携に期待

 このレポートは、冒頭で述べた国内カーナビ市場の堅調ぶりについて、その要因を解明したものではありませんが、カーナビの現状と今後について、ある程度客観的に予測していることは確かだと思います。

 個人的には純正カーナビとスマホナビを併用していますが、それぞれに一長一短を感じているのが正直なところ。純正カーナビはやはりナビとしての操作性に優れ、ナビ以外の車載情報表示ディスプレイとしても活用できます。ITリテラシーが高くない人にも使いやすいでしょうし、その意味ではやはり家電感覚。ただし、地図情報の更新が面倒ですし、渋滞情報などの反映などにもタイムラグがあるように感じます。

 その点、スマホナビはこれらのデメリットをクリア。渋滞情報にもリアルタイム性を感じますし、乗車前に予め走行ルートを確認できることなど、ドライブ情報提供装置としての使い勝手に優れます。

 さらにいえば、もともと使っていたタブレットに無料のナビアプリをインストールして流用しているだけなので、イニシャルコストは基本的にはゼロ(専用スタンドは購入しましたが)。もちろんカーオーディオやカーTVなどとしても活用できます。ただし、車載カメラ(バックカメラ、ドライブレコーダー等)の映像が見られないなど、自車情報の表示装置として活用できないことがデメリットでしょうか。

 それだけにいつも思うのは、スマホやタブレットをダッシュボードに差し込んだ瞬間に、車載ディスプレイとして機能するようになれば、ということです。ナビだけでなく、自車情報のすべてを表示できれば、これほど重宝なものはないように思います。

 こうしたシステムを将来、カーナビと呼ぶのかは分かりませんが、今のように「スマホ対カーナビ」という単純な図式でなくなることは確かでしょう。カーナビなしでの運転がますます考えにくくなっているだけに、両者の連携こそがコネクテッドカーを広く早く普及させる大きな原動力になるはずです。(征矢野毅彦)

※1)IVIシステム:メーター、HUD、カメラ、レーダーなどの各種デバイスと連携するシステムであり、通信モジュールを内包することにより、車外とのデータ通信を可能としている。
※2)eコックピット:センターディスプレイ、クラスタディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等を統合した車載のヒューマン・マシン・インターフェイス。
※3)KT法:後方の安全確認をする1個以上のバックモニターカメラの搭載を義務付ける法律。