Shiftall岩佐琢磨CEOが登場/シャニム67号対談IoT家電のイノベーターが語った
「モノからコトへ」の深い真相

Shiftallブランドの第1号商品となる予定のIoT冷蔵庫「DRINKSHIFT」

 次回のシャニム67号は5月末の発行予定で、現在、順調に編集作業を進めています。ご好評いただいている「福島敦子のアントレプレナー対談」もすでに取材を終え、今は原稿作成&原稿チェックの真っ最中。今回はIoT家電のベンチャー、(株)Shiftall(シフトール)の岩佐琢磨代表取締役CEOにご登場いただきます。

 シフトールは2018年2月、岩佐CEOが創業したIoT家電ベンチャーのセレボが子会社として設立した会社ですが、同年4月にパナソニックがその全株を取得して子会社化し、話題になりました。というのも岩佐CEOはもともとパナソニックのご出身。5年で退社後、2008年にセレボを創業し、独自視点のIoT家電を次々に開発・製造。インターネットを通じて世界各国で販売するという特徴的なビジネスモデルで注目されていたからです。にもかかわらず、「なぜ、再びパナソニックと?」というわけです。

 その詳細はシャニム67号までお待ちいただきたいのですが、一ついえることはパナソニックの現経営トップである津賀一宏CEOや宮部義幸CTOは、岩佐CEOとは知らない間柄ではなかったということ。そのことが今回の電撃的な子会社化につながったことは確かです。

 個人的にもシフトールのニュースは当時、かなり気になるものでした。というのも当時の親会社だったCerevo(セレボ)は、注目すべきメーカーだと思っていたからです。セレボを初めて認識したのは2017年に米国ラスベガスで開催されたCES 2017でした。セレボのブースに展示されていた試作機「Lumigent」を見たときに、面白い製品を開発するメーカーだなと直感したからです。

セレボのロボット・デスクライト「lumigent」(試作機)

「モノからコトへ」を誤解しないほうがいい

 Lumigentは音声で操作するデスクライト。話しかけると作業にあわせたライティング位置へ自動的に移動するというロボット・デスクライトです。2017年のCESは音声操作元年ともいえるような年で、会場はアマゾン・アレクサ一色といっても過言ではないほど。アマゾン自体はブースを出展していないものの、家電メーカー、ITメーカー、そして自動車メーカーなどがこぞってアマゾン・アレクサ対応をブースでアピール。音声操作・音声認識が一気呵成の広まりをみせ始めていました。

 ただし、当時の音声操作による用途は、その大半が電源のオン・オフやインターネット経由での情報入手など。リモコンが声に代わるというイメージのものでした。

 ところがLumigentはまず、デスクライトに音声操作を組み込んだという点でユニーク。しかも点灯だけでなく、最適照射のための変形・移動などを音声で操作するという点で、かなり先を行っているように感じました。

 セレボのHPをご覧いただくと分かるのですが、同社の製品は基本的にすべてハードウェア。そこにインターネットをつなげることで、新たなベネフィットを提供する機器ばかりです。その精神はシフトールにもそのまま受け継がれており、岩佐CEOは「うちのチームは“ハードウェア×インターネット”が一番得意。このバリューを出せるところで勝負したい」と語っていました。

 これをうかがったときに、「では、ぜひに」といってお聞きしたのは、「今のビジネスの流れは“モノからコトへ”です。その流れとは一線を画し、ハード主体でいくのですか?」ということ。それに対する応えは「コトにもモノがいる。そこを誤解しないほうがいいと僕は思っています」ということでした。

 「例えば登山はコトですが、そのためには寝袋、テント、登山靴、カメラなどが必要です。“このカメラ、いいでしょう?”では売れなくなったけど、登山をするのにカメラも必要なので買います、という話。要は入り口が変わったんです。入り口の代わり方に応じて、最適なモノの提供方法だったり、最適なモノの形があるんじゃないかと」

 「コトにもモノが必要なので、そこは誤解しないほうがいいと思っています。僕らもコト・ドリブンのことをやっていくつもりですが、“ではコアコンピタンスは何ですか?”というと、モノを提供できること。コトから入っていく時代になったというのはその通りなんですけど、その先、最後はモノが必ずあります」

 これをうかがったときに、さすがに長くインターネット×ハードウェアに取り組んできた方の言葉は深いな、と感じました。というのも自分のような単細胞は「モノからコトへ」と聞くと「もうモノは売れない。これからはコトだ」と思ってしまうのですが、そういう単純な話ではないわけですね。

 岩佐CEOの言葉を独自に解釈すれば「コトはモノを売るための手段・ツール、あるいはモノを企画・開発するための切り口」だと理解したのですが、いかがでしょうか。今回の対談はお読みいただいた方に、昨今のキーワードである「モノからコトへ」を再考する良いきかっけになれば、と思っています。(征矢野毅彦)