2010.02.28
広告事業の活性化を目指す新手法 構内広告に「電子ペーパー」を採用|IT活用事例
IT活用事例|自治体編
仙台市交通局
広告事業の活性化を目指す新手法
構内広告に「電子ペーパー」を採用
●広告事業の活性化では、内照広告の価値向上が重 要な課題に
●内照広告に替わり 機動性の高い「電子ペーパー広告」を採用
●地 下鉄利用者からの注目度は抜群
●中 小企業や駅周辺店舗など、広告クライアントの新規獲得に期待大
「新たな活用法を提案することで内照広告の価値を向上させ、広告事 業の活性化を図る手段として電子ペーパー広告に注目した」。こう語るのは、仙台市交通局総務部経営企画課営業推進係の佐々木政道主任だ。
同局は、市内主要路線として1日15万人以上が利用する地下鉄南北線の駅構内で、08年12月に電子ペーパー広告「まちコミ」を商用化した。
電子ペーパー広告は、新しい広告媒体として期待されている「電子看板(デジタルサイネージ/*1)」 を利用したもの。デジタルサイネージとは、液晶ディスプレイやプロジェクターなどのデジタルツールを活用して、映像や情報などのコンテンツを表示する新し い広告メディアのことだ。既存の広告看板やポスターに比べ、豊かな映像表現による高い訴求力を持つ。
季節や時間、天候、視聴者属性など に合わせたタイムリーな情報提供により、ターゲットに対して最適なプロモーションを打てることが特長。このため、小売業など商業施設での導入が進んでいる が、交通機関では仙台市交通局が先駆けという。
これまで交通広告の稼ぎ頭は「内照広告」と呼ばれる電照看板。透過型のアクリルボードに セットした広告フィルムを、壁面に埋め込んだ蛍光管で照らすことで目立たせる方法だ。サイズも大きく訴求効果も高いため、ポスターや車内の中吊り広告など の売り上げを上回っていた。
だが、内照広告はフィルム作成などの手間や制作コストがかかるため、契約期間が年単位と長い。商品サイクル の短命化や販促ニーズの多様化など、機動性の高い掲示方法への要望が高まってきたことを背景に、内照広告への出稿数は減少している。
タイムリーな即日掲示を実現
そうした中、「掲示期間の柔軟性や即時性があり、コンテンツ制作の手間や煩雑な広告の入れ替え作業を効率化できる手法はないか」(佐々木主任)と模索。電 子書籍などで採用されている電子ペーパーに注目した。同技術で実績のあった凸版印刷から技術とサービス運用の支援を受け、1年間の実証実験を経た08年 12月から広告枠の本格販売に乗り出したのだ。
システム(図1)と広告枠の運用概要は以下の通り。構内に設置された電子ペーパー広告 は、PHS網を介して凸版印刷内のサーバーと接続。広告やコンテンツの入稿から審査、掲示まで一連の作業はすべてWeb上で処理できる。従来のような紙 ベースでの審査や広告の差し替え作業などが不要なため、即日掲示の実現が可能だ。例えば、広告主が当日に決めた「特売セール」などの即時性が必要な広告も リアルタイムに近い形で打つことができる。
広告出稿プランは、期間ごとに「1カ月(5400コマ)」「1週間(1260コマ)」「1日 (180コマ)」を用意している。コンテンツの表示時間は1コマ当たり15秒間。1台の電子ペーパー広告では16のクライアントやコンテンツを扱っている ため、16種類のコマが4分間(16コマ×15秒)で一巡するスタイルだ。
実証実験でコンテンツが広告だけでは注目率が低下するとの結 果を受けて、「天気」「ニュース」「本やレンタルのランキング」といった情報を織り交ぜながら16コマをリピート表示している(*2)。
現在、仙台駅に2台、勾当台公園駅と長町南駅、泉中央駅に各1台ずつの計5台を設置。プラン内の表示回数であれば、複数カ所への分散掲示に対応するなど、 柔軟なサービス体制を整えている。
本格的に電子ペーパー広告「まちコミ」の商用化をスタートさせてから約1年余り。効果は上々だ。
特に、広告に対する注目率アップには目を見張るものがあった。注目率の効果測定(*3)では、内照広 告への注目率が平均46%であるのに対し、電子ペーパー広告は69%と23ポイントも向上している。年代別に見ると、30代半ば以下の世代で大幅アップ。 例えば、「男性18歳?19歳」では41ポイント増の88%が注目するという測定結果が出ている。
また、電子ペーパー広告を導入して以 降、情報を見るために乗車位置を変更したという地下鉄利用者が10%に達するなど、注目度は大きい。
こうした性別や年齢別の属性、時間 帯別注目率の調査結果は、電子ペーパー広告設置駅の地域特性などのデータと合わせて、広告ターゲットを絞った効果的な出稿を実現するために活用している。 例えば、「21時以降は帰宅途中の50歳以上の男性による注目率が高い」「高級住宅街の最寄り駅」といったデータを基に、同時間帯の同駅で投資関係の広告 を掲示するといった具合だ。
出稿実績は、旅行会社のHISやダイエー、地元銀行など。「実際に現場で確認してみると、確かに注目率は高 い」「刻々と変わる商品情報をすぐに広告として配信できる点は便利」と広告クライアントからも一定の評価を得ている。
地元 中小企業の出稿増に期待
前述のように、デジタルサイネージには液晶ディスプレイなど、いくつかの 方法がある。その中で、電子ペーパーを選んだ理由は「技術的に鉄道特有の厳しい環境に適している」(佐々木主任)こと。線路脇では車両走行により鉄粉が発 生するため、デジタルツールを設置するには機器を密閉するなどの対策が欠かせない。
この点、電子ペーパーは表示画像の保持に電力を必要 とせず、画像書き換え時の消費電力量も小さいことから密閉構造が可能だ。しかも、画面サイズの変更柔軟性が高く既存の内照広告スペースに設置しやすいな ど、構内環境で採用するのに適した特徴を備えている。また、最大消費電力は20W前後。40W蛍光管8本が必要だった内照広告に比べて、電力コストが単純 計算で16分の1に圧縮される点も決め手の1つとなった。
一方で、電子ペーパー広告ならではの課題も抱える。「現段階では、技術的に高 精細なカラー映像の表示が難しい」(凸版印刷・情報コミュニケーション事業本部メディア事業開発本部・事業推進部の檀上英利部長)ことだ。
だが、これを逆手にとって地元中小企業や駅周辺店舗などの新規クライアント獲得に取り組む。「手頃な出稿価格」と「広告コンテンツ作成の簡便さ」が、こう した広告主にとってメリットとなるためである。
基本出稿料は、10万円(1カ月プラン)から1万円(1日プラン)。年間契約が一般的で 高額な内照広告に比べ手軽に利用可能だ。さらに、地元での認知度が掲示前後でどう変わったか、Webアンケートで調査してフィードバックするなど効果測定 によるメリット訴求にも力を注ぐ。
また、文字情報が中心の電子ペーパー広告では、コンテンツ作成が容易で費用もほとんどかからない。手 の込んだコンテンツを作る必要がないことから、個人企業や商店主などが交通広告を出稿する機会にもつながっていく。
電子ペーパー広告が どれだけ広がっていくか。その検証はこれからだが、「広告だけでなく防災情報の周知や様々な情報発信で地域活性化につながるツールになれば」と関係者の期 待は大きい。今後の動向に注目したい取り組みといえそうだ。
(*1)デジタル掲示板、電子情報ボード、電子ポスターなど様々な名称を持つが、一般的にはデジタルサイネージの呼称でほぼ統一されている
(*2)クライアントが掲示できる コマは、16コマから情報コンテンツを除いた部分
(*3)観察法。視線を上げて5秒以上広告に視線を向けた場合に「広告を視認した」とカウント
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